ふった(振った)

21/10/2017 19:08

動詞ふる(振る)」の連用形ふり(振り)音便形ふっ(振っ)完了助動詞」。

用例

それならおぬし死ぬるか」と言って、五助はきっと見つめた
 一声鳴いてふった
よいそんなら不便じゃ死んでくれいこう言って五助は抱き寄せて脇差抜いて一刀刺した
森鷗外阿部一族」1913)

 
たしか長春ホテルであつたと思ふそのから聞いたしかしそれそのとしてではなしにその長春事務所長してゐる出た時に、B画家らしいのんきな調子莞爾《にこにこ》と笑ひながら言つたのであつた。「、Sさんあゝいふ堅いしてゐるけれどもあれ中々隅に置けないんです
さう?」かう言つたには五十近いそれでゐて非常に若くつくつてゐる頭髪綺麗にわけた浮んだ
つい此間まで大連本社庶務課長してゐたんだが?」
庶務課長! Sさん――? それぢや、Yやつてゐる?」
さうだあそこ行つて見ました。Sあそこつい半年ほどまでゐたんですそのあと行つたんです
庶務課長から此処事務所長では左遷です?」
まアさういふわけです。S好いですけれどもそれ親切で趣味深くつてことわかるなどには非常にいゝなんですけれど――」B少し途切れて、「それ庶務課行くあの《へや》タイピストあるでせう?」
……」
あのゐるぢやないですけれども。Sさんそのタイピスト可愛がつてたうとう孕ませて了つたもんですから?」
ふむ?」いくらか眼を睜《みは》るやうにして、「あゝいふところにもさういふことあるのか? ふむ? 面白い? つまりさうするとゐるゐたやつたわけです?」
さうです
さうかな……。さういふこと沢山あるんです?」
 
かう言つたにはその大きな石造《せきぞう》建物一室――卓《テイブル》三脚並べた電話絶えず聞えて来るクツシヨン椅子置いてあるその向う後姿見せてタイピストカチカチやつてゐる一室さまはつきりと浮んだ
それで何うした? では囲つてでもあるのか
いや本社から此方《こつち》来るすつかり解決つけて来たらしい何でももう子供産んだとか言つた――」
よく早く解決出来た?」
だつて困るからなア――」B笑つて
そこに行くとあゝいふあるから何うにでもなる……」
さうかな――」
 
じつと考へ沈んだ思ひがけない人生事実といふことではなかつたけれども一種不思議な心持感じた。「ふむ!」と言つてまた振つた
それでその別品《べつぴん》?」
ちよつと白いだけですかう言つて笑つた
田山花袋(田山録弥)「アカシヤ1924冒頭
こちらいらっしゃいましこちら空いとりますから中年女一直線伸びた片側行儀よく並んだなし椅子指さした
どこ? あそこ厭だ坐りたい」中井自慢レインコオトポケット両掌入れて振った
まあこちらさんずいぶん久しぶりじゃありませんかそれじゃどこいい部屋いいでもあちら満員なの
 中年女なさそうな三人連れ敬遠した
坐らなきゃ意味ないほか行く
むり言うもんじゃないわよ
むりじゃないあっちいい
 威勢よく椅子テエブルかきわけて、中井ひょろ長い身体はこぶは、片側だけ部屋しつらえてある障子唐紙なく土間から見通し一尺四方床の間磨きあげた床柱一組ずつ具えてある
武田泰淳風媒花1952