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父(ちち)

20/01/2018 18:32

→「ちち(父)

用例

[発表年順]
 越後三条生れなり兼ねたり伯父春庵とて医師なりよりは伯父愛せられて幼きより手習学問こと皆な伯父世話なりし自ら言う異ななれど物覚えよく聞て二三知るほどなりしゆえ伯父なお入れてこのこそ穂垂という苗字知らせまたその生国としてこのをも挙るものなれとていよいよ珍重して教えられ逢えばその吹聴さるる嬉しき思いますます学問入れしゆえ神童言われ十三小学校助教なれり名誉伯父面目ためには三条町幅狭きようにてこのばかりか近郷褒め草ある県令学校巡廻あり講義聴かれて天晴慧しきかなこれまで巡廻せし学校生徒うち比べるなし校長語られたりこの洩れ聞きてさてはこの冠たるのみならず新潟県下第一俊傑なりしこの県下第一ならば全国英雄集まる東京出るとも第二流には落つまじ俄かに気強くなりて密かに我と握りて打笑みたりこの頃考えには学者政治家などという区別考えなく豪傑英雄というのみにはありしなりさりければなおさらに学問励み新たに来る教師には難問かけて閉口させにはにも伯父にも開かせぬなり十五新潟出て英学せし教師教うるところ低くして満足せず八大家文読み論語さえ講義天下経綸せんとするオメオメと持つ持つ風船乗ってしつつ廻るのと児戯に類する学ばんや東京出でばかかるあるまじ深淵あらねば潜れず東京出て我が才識研ぎ驚かすほど大功業建てる天下第一大学者ならん一詩のこして新潟学校去り在所かえりて伯父出京語りし伯父顰め、「東京にて勉学望むところなりしかしまだ早し卑近なりとて知り覚ゆるだけ方便なり二三新潟にて英学なしその上にて東京出でよ学問にはよらじ上磨きだけ東京にてせよ止められ屈して一年独学したれどはしる如き出京志し弱き手綱繋ぐべきにあらず十七なりし決して伯父乞いもし許されずは出奔せん覚悟様子それ悟りて左まで思わば出京せよ許可得たり
饗庭篁村良夜」1889、冒頭
「父(ちち)」用例(1910年代)
遺書
 大輝
此の経典知る如く刑死する読誦せるものなり
 
生るる符節合する如く突然として霊魂神仏此の法華経誦持する至れるなり
 
即ち生るるより臨終まで読誦せられたる至重至尊経典なり法華経のみ残す想ひ出さるる恋しき行路に於て悲しき迷へる怨み怒り悩む楽しき嬉しき此の経典を前にして南無妙法蓮華経唱へ念ぜよ然らば神霊直ちに為に諸神諸仏祈願して求むる満足せしむべし
 
経典読誦解脱する得る来らば二十年間為せし如く誦持三昧を以て生活根本義せよ即ち其の生活如何問はず共に活き而して諸神諸仏加護指導在る得べし何物をも残さず而も此の無上宝珠留むるなり
   
昭和十二八月十八
 一輝
三島由紀夫金閣寺1956冒頭
 つい先だって夜更け伊勢海老一匹到来物あった
 
ひと仕事終えて風呂入りたまには人並み時間入ろうかな考えながら思い切り悪く夕刊ひろげたチャイム鳴って友人からの使いいま伊豆から参りました竹籠入った伊勢海老玄関三和土《たたき》置いたのである
 
オドリすれば三、四人前ありますというだけあってみごとな伊勢海老であった勿論生きている
向田邦子詫び状」1978、冒頭
[発表年未詳・筆者生年順]