突然(とつぜん)

10/11/2014 09:53

→「とつぜん(突然)

用例

[発表年順]
五六寄って火鉢囲みながらしていると、突然一人青年来た聞かず会った事もない全く未知である紹介状携えずに取次通じて面会求めるので座敷招じたら青年大勢いるへ、山鳥提げて這入って来た初対面挨拶済むと、その山鳥真中出してから届きましたからといってそれ当座贈物した
夏目漱石「山鳥」『永日小品』1909冒頭
しかし二日ばかり立ってから岡田無縁坂向いて出掛けて例の格子戸近く来た先き湯帰り突然記憶から意識表面浮き出したのでその一寸見た打ち附けて二段ばかり細く削った渡してそれ巻いた肘掛窓あるその障子ばかり明いていて伏せた万年青見えているこんな幾分か注意払って見た為めに歩調少し緩くなって真ん前来掛かるまでに時間余裕生じた
森鷗外」1913)
たとへば對談してゐる最中突然默り込むことがあるそんな瞑想訪問されたのである瞑想つねに不意であるそれ招くのでなくまた招くことできないしかしそれ來るときにはあらゆるものにも拘らず來るのである。「これから瞑想しようなどといふことおよそ愚にも附かぬこと爲し得ることせいぜいこの不意に對して常に準備しておくことである
三木清瞑想について」『人生論ノート』1941、冒頭
オレ親方ヒダ随一名人うたわれたタクミであった夜長長者招かれたのは老病死期近づいただった親方身代りオレスイセンして
これまだ二十若者小さいガキころからオレ膝元育ち特に仕込んだわけでもないオレ工夫骨法大過なく会得しているです五十仕込んでもダメダメもの。青笠《あおがさ》古釜《ふるかま》くらべる巧者ではないかも知れぬこもった仕事します造ればツギ手仕口オレ気附かぬ工夫編みだしたこともある仏像刻めばこれ小僧訝かしく思われるほど深いイノチ現しますオレ病気ために余儀なく此奴代理差出すわけではなくて、青笠古釜競って劣るまいオレ見込んで差出すもの心得て下さるように
きいていてオレ呆れてただまるくせずにいられなかったほど過分言葉であった
オレそれまで親方ほめられたこと一度なかったもっともほめたこともない親方ではあったそれにしてもこの突然ホメ言葉オレまったく驚愕させた当のオレそれほどから多く古い弟子たち親方モウロクして途方もないこと口走ってしまったものだ云いふらしたのはあながち嫉みせいだけではなかったのである
坂口安吾夜長」1952、冒頭
[発表年未詳・筆者生年順]
北浜事務所から突然拘引された
刑事部屋這入るそこには頭髪切った無表情な少女かたわら悄然と老衰した彼女坐っていたその周囲刑事たち取まいて中年過ぎた警部によって私たち取調べられた
戯れ絵ように儀礼的な刑事部屋あぐらかいた白毛まじった老警部言った
「――チタ子から誘拐罪として告訴状提出しているのだがチタ子とはどんな関係なんだ。」
吉行エイスケ(1906-1940)「大阪万華鏡冒頭